放課後、A組の教室は熱気でむんむんしていた。
「ねぇ! 文化祭の出し物、そろそろ決めよー!」
「パンケーキ屋とかどう?」
「映えるやつがいいって〜!」
廊下まで響く声に、奏はそっと耳を塞ぎたくなる。
こういう“意見を出し合う場”が、少し苦手だ。
(また変なこと言って空気乱したら……)
中学の記憶がうっすらよぎったとき——
「奏、こっち」
当たり前みたいに蓮が袖を引く。
教室の後ろ側に空いた席を指し、当然のように隣へ座る。
「ま、まず離れて!」
「なんで? 俺、奏の意見聞きたいんだけど」
「……べつに言うほどの意見なんて——」
「あるよ。絶対」
蓮は断言するように言う。
その声音に、奏は少しだけ胸が温かくなってしまう。
話し合いは進んでいき、女子からこんな案が出た。
「ねえ、カップル喫茶ってどう?
蓮くんなら絶対人気出るよ〜!」
きゃー! と女子たちが盛り上がる。
蓮は「まじ?」と笑っていたけれど——
「でも」
次の瞬間、ひゅっと奏の腰を引き寄せた。
「俺、奏と同じ企画がいい」
耳元で言われ、奏は真っ赤になる。
「な、なんで今それ言うの!?」
「え、普通のことじゃね?」
普通じゃない。
周りの視線が一気に刺さる。
女子たちの何人かは、露骨に眉をひそめていた。
(……また。私のせいで、蓮が……)
胸がぎゅっと縮む。
そんな奏の変化に気づいたのか、蓮はふっと目を細めた。
「……奏、無理してない?」
その声が優しすぎて、逆に苦しい。
あんたのせいだよ、と叫びたくなる。
「無理してないよ。
私なんて、クラスで役に立たないし」
「は?」
蓮の声が低く落ちる。
「誰がそんなこと言ったの」
「昔の……話だから……」
「奏が自分を下げる言い方、俺ほんと嫌い」
蓮は真っ直ぐ奏を見る。
「中学で何があったか、分かんないふりしてきたけどさ。
——俺には、全部話してよ。
奏のことなら、全部知りたい」
その言葉に、胸が痛いほど揺れた。
昔みたいに“守られる”のが怖い。
でも、蓮にだけは……少し頼りたくなる自分もいる。
「……文化祭の案、どうするのかなぁ!」
先生の声が教室に響き、ふたりの空気は一旦中断された。
「よし、企画は——写真館に決定!」
ぱっと教室が湧く。
「装飾はチームに分かれてやるぞー!」
そのとき、蓮が当然のように手を挙げた。
「奏と同じチームで」
「は!?」
「はぁぁ??」
クラスの声が重なる。
蓮はまったく気にしない。むしろ、薄く笑っている。
(……蓮、ぜったいわざとだ)
奏が抗議しようとした瞬間、蓮が耳元で小さく言った。
「奏のこと、ひとりにしないから」
その言葉に、胸がまた痛くなる。
“守られるのが怖い”
“でも、離れたくない”
そんな矛盾だけが、今日も奏の心を締めつけていた。
「ねぇ! 文化祭の出し物、そろそろ決めよー!」
「パンケーキ屋とかどう?」
「映えるやつがいいって〜!」
廊下まで響く声に、奏はそっと耳を塞ぎたくなる。
こういう“意見を出し合う場”が、少し苦手だ。
(また変なこと言って空気乱したら……)
中学の記憶がうっすらよぎったとき——
「奏、こっち」
当たり前みたいに蓮が袖を引く。
教室の後ろ側に空いた席を指し、当然のように隣へ座る。
「ま、まず離れて!」
「なんで? 俺、奏の意見聞きたいんだけど」
「……べつに言うほどの意見なんて——」
「あるよ。絶対」
蓮は断言するように言う。
その声音に、奏は少しだけ胸が温かくなってしまう。
話し合いは進んでいき、女子からこんな案が出た。
「ねえ、カップル喫茶ってどう?
蓮くんなら絶対人気出るよ〜!」
きゃー! と女子たちが盛り上がる。
蓮は「まじ?」と笑っていたけれど——
「でも」
次の瞬間、ひゅっと奏の腰を引き寄せた。
「俺、奏と同じ企画がいい」
耳元で言われ、奏は真っ赤になる。
「な、なんで今それ言うの!?」
「え、普通のことじゃね?」
普通じゃない。
周りの視線が一気に刺さる。
女子たちの何人かは、露骨に眉をひそめていた。
(……また。私のせいで、蓮が……)
胸がぎゅっと縮む。
そんな奏の変化に気づいたのか、蓮はふっと目を細めた。
「……奏、無理してない?」
その声が優しすぎて、逆に苦しい。
あんたのせいだよ、と叫びたくなる。
「無理してないよ。
私なんて、クラスで役に立たないし」
「は?」
蓮の声が低く落ちる。
「誰がそんなこと言ったの」
「昔の……話だから……」
「奏が自分を下げる言い方、俺ほんと嫌い」
蓮は真っ直ぐ奏を見る。
「中学で何があったか、分かんないふりしてきたけどさ。
——俺には、全部話してよ。
奏のことなら、全部知りたい」
その言葉に、胸が痛いほど揺れた。
昔みたいに“守られる”のが怖い。
でも、蓮にだけは……少し頼りたくなる自分もいる。
「……文化祭の案、どうするのかなぁ!」
先生の声が教室に響き、ふたりの空気は一旦中断された。
「よし、企画は——写真館に決定!」
ぱっと教室が湧く。
「装飾はチームに分かれてやるぞー!」
そのとき、蓮が当然のように手を挙げた。
「奏と同じチームで」
「は!?」
「はぁぁ??」
クラスの声が重なる。
蓮はまったく気にしない。むしろ、薄く笑っている。
(……蓮、ぜったいわざとだ)
奏が抗議しようとした瞬間、蓮が耳元で小さく言った。
「奏のこと、ひとりにしないから」
その言葉に、胸がまた痛くなる。
“守られるのが怖い”
“でも、離れたくない”
そんな矛盾だけが、今日も奏の心を締めつけていた。



