カーテンの開かれた窓から差し込む光で目が覚める。
白く滲んだ明るさが視界に広がり、反射的に目を閉じた。
いつの間にか眠っていたらしく、時刻はもう昼をまわっていた。
体を起こそうとして、すぐに諦める。
肩から腕、足の先まで、鉛が流れ込んでいるような、鈍い感覚がまとわりついてくる。
ベッドに沈み込んだままの体は、自分のものじゃないみたいだった。
ここ最近、夜中に病室を抜け出している。
それが原因だとわかっていても、今さらどうにもならない。
今までは、診察や検査以外でほとんどベッドから動かなかった。
ただベッドに横たわって、嫌な現実を思い出さないようにと強く目を閉じて、ひたすらに一日が終わるのを待っていた。
考えないように、と思っていても、
意識は勝手に同じところへ戻ってきてしまう。
思うように動かない体のこと。
少しずつ確実に進んでいく病気のこと。
どれだけ向き合ったところで、現実は何も変わらない。
ただ、胸の奥に、言葉にならない澱のようなものが溜まっていくだけだ。
だから、絵のことを考える。
昼の光が差し込むベッドの上で、開けたスケッチブックに空を描いていた時間。
無心で筆を動かし、色を載せていく。
真っ白な紙が、少しずつ光を帯びていく。
その間だけが、この無機質な入院生活から切り離された感覚をくれた。
筆先に意識を預けている間、心が静まる。
凪いだ水面みたいに、余計な波が立たなくなる。
それなのに、ふいに誰かの気配を探すように顔を上げてしまうことがある。
そこに理由は見つからない。
自分でも、なぜそんなことをするのか分からなかった。
開け放した窓から風が入り、
眩しい光が白く揺れて、視界を満たす。
思わず目を細め、額に手を当てた。
『ちゃんと見てきてね』
昨夜、夜空を見上げたまま、
彼女はそう言った。
その言葉が、すっと胸の奥に沈んでいる。
理解しようとしても、意味は掴めない。
それなのに、無視することもできず、
静かに、けれど、落ち着かないままで残り続けている。
閉じかけた瞼に、もう一度だけ力を入れる。
体を起こし、ゆっくりと窓に近づいた。
窓枠にそっと手をついて、顔を上げる。
見上げた先には、昼の空があった。
光は強く、容赦なく降り注ぎ、
目の奥に突き刺さるみたいだった。
くらりとする感覚に耐えきれず、思わずカーテンを引く。
さっきまで満ちていた光が遮られ、病室はあっけないほど静かな暗さに戻った。
ふっと小さく息を吐いた。
足先を見つめたまま、窓枠にもたれかかる。
彼女の言葉が、今も反響している。
どうして天音は、昼の空が見たかったんだろう。
胸の奥に、小さなざわめきが残ったままだった。
それでも、僕には、見たいとは思えなかった。
ベッドに戻り、体を預ける。
そのままそっと目を閉じると、
まだ昼の空の明るさが、瞼の裏に残っていた。
強く確かな光の感触が、心にじんわりと広がる。
僕には、
あまりにも、眩しすぎる。

