陽の光が燦々と樹木やバスケットコートに降りそそぎ、世界そのものを明るく照らしていた。
ハイジの髪にも光の粒が染み込んで、深い緑がいっそう鮮やかに景色へ溶けこんでいく。
私も……動けなかった。
あの眼差しから、目を逸らせなかった。
「ももちゃん?」
だけど、止まっていた私の時間を動かしてくれたのは。
「ビックリするわ~、まさかももちゃんが来てくれると思わんかったし」
朗らかに笑う、ケイジくんだった。
全然気づかなかった。
あの少年達の中に、赤髪の彼が混ざっていたなんて。
ケイジくんは私を見つけると、ヤンキー集団の輪から抜けてこっちに歩いてきた。
その動きが合図になったみたいに、コート周辺の少年たちの視線が、一気に私へと集まった。
「あー!姐さんだ!!」
「ほんとだ、姐さんじゃないっスか!!」
「飛野さん、黒羽さんも!こんちゃーっス」
彼らは勢いよく立ち上がり、揃って深々と頭を下げてきた。
隣の飛野さんとタイガにも、挨拶とは思えない挨拶をしている。
なんてことだ。
彼らまでもが、私を『姐さん』と呼ぶようになっていたのだ。
私と同じ年くらいの男の子達が、ミジンコレベルの私に……姐さん……。
これ絶対、大教室のおにーさん達の影響だ。そうに違いない。
あのおにーさん達も黒鷹のメンバーなんだろう。
こんなとこにまで波紋が……。
好奇心MAXで寄ってくる少年達に、
「いや、ははは……あ、姐さんとかやめてくださいよ~。私なんて一センチ以下の存在ですから……」
と頼んでみても。
「何言ってんスか!!姐さんか姐御にしようか、三日三晩全員で寝ずに考えたんですから!!」
ギラついた目で迫られ、その迫力に危うく「はわっ」とか言いそうになった。
……ほ、ほんとだ、みんなクマできてる。
「結局、あみだくじで姐さんに決まったんスよ~」
ええっ!
じゃあ最初からあみだくじで決めればよかったんじゃないの!?
って思ったけど、
三日三晩の努力を真っ向から否定する勇気もなく、しかもそんな情熱を見せられたら、『姐さん』をやめてもらうのも気が引けて。
「……日本一頼りなくて、タヌキっぽい姐さんですけど、よ、よろしくお願いします……」
消えそうになりながら、そう言うしかなかった。


