気まぐれヒーロー3



陽の光が燦々(さんさん)と樹木やバスケットコートに降りそそぎ、世界そのものを明るく照らしていた。

ハイジの髪にも光の粒が染み込んで、深い緑がいっそう鮮やかに景色へ溶けこんでいく。


私も……動けなかった。

あの眼差しから、目を逸らせなかった。



「ももちゃん?」



だけど、止まっていた私の時間を動かしてくれたのは。



「ビックリするわ~、まさかももちゃんが来てくれると思わんかったし」



朗らかに笑う、ケイジくんだった。


全然気づかなかった。

あの少年達の中に、赤髪の彼が混ざっていたなんて。

ケイジくんは私を見つけると、ヤンキー集団の輪から抜けてこっちに歩いてきた。

その動きが合図になったみたいに、コート周辺の少年たちの視線が、一気に私へと集まった。


「あー!姐さんだ!!」
「ほんとだ、姐さんじゃないっスか!!」
「飛野さん、黒羽さんも!こんちゃーっス」


彼らは勢いよく立ち上がり、揃って深々と頭を下げてきた。
隣の飛野さんとタイガにも、挨拶とは思えない挨拶をしている。


なんてことだ。

彼らまでもが、私を『姐さん』と呼ぶようになっていたのだ。

私と同じ年くらいの男の子達が、ミジンコレベルの私に……姐さん……。

これ絶対、大教室のおにーさん達の影響だ。そうに違いない。

あのおにーさん達も黒鷹のメンバーなんだろう。

こんなとこにまで波紋が……。


好奇心MAXで寄ってくる少年達に、
「いや、ははは……あ、姐さんとかやめてくださいよ~。私なんて一センチ以下の存在ですから……」
と頼んでみても。



「何言ってんスか!!姐さんか姐御にしようか、三日三晩全員で寝ずに考えたんですから!!」



ギラついた目で迫られ、その迫力に危うく「はわっ」とか言いそうになった。


……ほ、ほんとだ、みんなクマできてる。



「結局、あみだくじで姐さんに決まったんスよ~」



ええっ!

じゃあ最初からあみだくじで決めればよかったんじゃないの!?

って思ったけど、
三日三晩の努力を真っ向から否定する勇気もなく、しかもそんな情熱を見せられたら、『姐さん』をやめてもらうのも気が引けて。



「……日本一頼りなくて、タヌキっぽい姐さんですけど、よ、よろしくお願いします……」



消えそうになりながら、そう言うしかなかった。