気まぐれヒーロー3




「ずっと前に、一度……」



彼は“その日”を振り返り、話をしてくれた。


私と出逢う前のこと。



入学して、まだ間もない頃。


放課後、用事があってハイジを探しに屋上へ向かったという。

鉄のドアを開けた先に広がっていたのは、誰もいない、風だけが通り抜ける空間。

薄く汚れたコンクリート。

それだけで造られた、無機質な場所。


そのまっすぐ続く床の先に──

ハイジの、後ろ姿があった。


フェンスを越え、足を踏み外せば命はないというのに……屋上の縁にアイツは静かに腰かけていた。


沈みゆく夕陽と向かい合うように、焼けつくような光を浴びて。

世界は朱に染まっていく。



「あん時は、ちょいビビったわ」



そう言って、ケイジくんは控えめに笑った。


下手に声をかけて驚かせてしまえば、転落する危険性がある。


いや──もしかしたらハイジは、命を投げ出そうとしてたんじゃないか、って。



「そんな、……そんなはずない!!だって、ハイジだよ!?あのハイジが、そんなこと……!!」



とっさに口にしたものの、上手く言葉にできない。

ケイジくんに詰め寄りながらも、それ以上何も言えなかった。

頭じゃない。
心の方が、勝手に動いていたから。


だって……。



“この俺とデートできんだ、喜べ”



偉そうで、生意気で。



“大丈夫だ。ジローちゃんは生きてんだろ。これからも、生きてくんだよ”



何よりも、激しく燃える魂で、私を助けてくれた。

自ら命を絶つなんて行為とは、程遠い人だと。


そう、思っていた。


私の戸惑いをそのまま受け止めながら、ケイジくんは続きを語ってくれた。