気まぐれヒーロー3




“知らねえだろ、お前は。出逢う前のアイツを”



ジローさんの声が、頭の中で鮮明に蘇る。



「ガキの頃、両親が離婚してな。俺は母親に、ハイジは父親に引き取られた。アイツは長男やから」



でも……私の耳に届くケイジくんの声が、やがてすべてを塗りつぶしていく。


──って。

今、ケイジくん……。



「へ?ハイジが長男?ケイジくんじゃなくて!?」

「いや、驚くとこそこなんかい!長男いうてもほんの数分の差やで」



思わずぽかんと見返してしまったからか、ケイジくんはまたうひゃひゃと笑い出した。

いや、双子なんだし兄弟に差なんてほぼないのはわかってるけど。

それでも──どっちが“兄っぽい”かと言えば、私はケイジくんな気がしていたから。

意外だったんだ。

彼の言う通り、本気で驚くべきところはそんな部分じゃないはずなのに。



「そんで、その後親父が転勤なって。ハイジは親父と一緒にこっちへ引っ越してきてん。せやしアイツが関西におったんは、ほんのちょっとだけやねん」



ああ……そういうこと、か。

幼い頃に両親が離婚して、それぞれ引き取られ、離れ離れで暮らしていた。

でも、ケイジくんはお母さんと関西で暮らしていて……今ここにいるってことは──。



「死んだよ、母親は。……病気でな」



私が理由を尋ねる間もなく、ケイジくんは静かに告げた。

抑揚のない声で、感情をひとつも滲ませず。



「だから、俺も親父とアイツと暮らすことになった」



ケイジくんは、まるで透明の台本があるかのように。

綴られた物語を、朗読するかのように。

淡々と言葉を積み重ねていく。


刺されたと、言った。

ハイジに……実の兄に。


家族なのに引き離され、同じ屋根の下で住むことも叶わなかった。

兄に会えず、お父さんにも会えず。

ハイジも弟に会えず、お母さんにも会えず。


ずっとバラバラだったんだ。