気まぐれヒーロー3




瞬間、体が硬直した。

ケイジくんの瞳ががらりと色を変え、艶めいた気配を帯びる。

怖い。

こんな風に一瞬で、まったく別の仮面にすり替えてしまう彼が。


触れられた指先から、じわりと侵食してくる熱。

逃げなきゃ──そう思った。



「ケイジくん、私を連れ出したのはその話をするため……?でも、どうして私にそんなことを……?」



このままでは引き込まれて、甘い毒牙にかけられてしまいそうで。

私は平静を装いながら、そっと彼の手から身を離した。



「アイツが……マジやからや。あんたに」



雀が、愛らしく鳴いている。

だけどそんな歌声さえも──ケイジくんの凍えるような眼差しが、かき消してしまう。



「俺はあんなハイジ、見たことない」



恐怖を覚えたのは一瞬だけ。

直後、彼の目から冷たさはふっと消えた。



「あんたに惚れてんのか、それとも──。ハイジが何を思てんのかまでは、わからん」



視線を落とした彼の睫毛が、下まぶたに長い影を落とす。

その横顔を、私は黙って見つめていた。

ケイジくんは口を閉ざし、しばらくそうしていた。


そして──



「けど、これだけははっきり言える。アイツにとって、ももちゃんは“特別”やってこと」



怖かったのは……恐れていたのは、

きっとこれだったのかもしれない。


もう、ざわめくのが樹木の葉のこすれる音なのか、湖面の波立つ音なのか、それとも私の心臓の音なのか。

それすら朧げで。



「……俺らは、もともと関西に住んどったんよ。小学校あがるまではな」



私はただ、彼らの遠い日の話に耳を傾けるしかなかった。