気まぐれヒーロー3




「さんふじん、か……?」


ジンジンする鼻の頭をさすっていると、飛野さんがハンドルを握ったまま、錆びたロボットみたいなぎこちない動きで振り返ってきた。

その極限まで見開かれた目を見れば、飛野さんがかなり動揺しているのは明らかだ。

居たたまれなくなって、私は視線を逸らした。

タイガは興味なさげにスマホを弄っている。


「花鳥、ちょ、ちょっと待て。何でそんなトコ行かなきゃなんねーんだ」

「あの、その、私……言いにくいんですけど」


昨日、ジローさんが口にした言葉。



“元気な子を、生んでくれ”



その時は聞き流したけど、帰ってからよく考えたら……怖くなってきた。

私、赤ちゃんがどうやってできるか、とか……その、本当にぼんやりとだけど知識はある。

でも。そういうコトに関して、未知の部分が多くてあやふやすぎる。

私、ジローさんとお風呂入っちゃったりしたし。
む、胸まで触られちゃったし。

そんなのでも、もしかしたら……妊娠、したりとか……あったらどうしようって。

知らないことだらけだから、めちゃくちゃ不安になった。


「赤ちゃん、できちゃったかもって……」

「いや、待った!!待ってくれ!!えーっと……まあ落ち着け!落ち着こう!!な!?大丈夫だ、時間はまだある!!」


飛野さんは、こっちが心配になるくらい焦っていた。

一番取り乱していた。


「その……相手は、誰なんだ」

「それが……わからないんです、誰の子なのか」

「っ!!!!」


うわっ!!
飛野さん、仰天しすぎて顔が阿修羅像みたいになってる!!

だ、だってわからない!!本当に!

ジローさん何も言わなかったし!!!


「黒羽アァ!!」

「おあっ!?」


ついに飛野さんの脳が容量オーバーしたらしい。
ぷっつんした。

隣のタイガの胸ぐらを恐ろしい剣幕で掴み、今にも殴りかかりそうになっていた。

彼は途轍もない誤解をしているみたいだった。


「お前ってヤツは……!!見損なったぞ、どこまで見境ねえんだ!!!ヤれりゃあ何でもいいのか!!てめえの子孫で日本が乗っ取られんのだけは、俺は我慢できねえ!!」

「何言ってんだアンタ!!俺はこう見えて慎重なんだよ、んなヘマすっか!!」