「産婦人科に……行くべきなんでしょうか」
「っ、!!!」
キキーッ、とタイヤが悲鳴を上げ、アスファルトに爪を立てる勢いで車が止まった。
「あだっ」
後部座席に座っていた私はつんのめり、前の運転席に頭から突っ込んで盛大に顔面をぶつけた。
急停止した車。
無言の車内。
幸い、後方には他の車は見当たらなかった。
「ひーちゃん、なんだよ急ブレーキなんか踏んで。何か見っけた?カワイコちゃんのパンツでも見えたか?」
「…………」
土曜日の朝。
絵の具をそのまま空に流したみたいに、どこまでも澄んだ青が広がっている。
太陽も負けじと眩しい光で、今日も地球を元気に照らしていた。
とっても良いお天気だった。
朝起きてすぐ、飛野さんから「来てほしいところがある」と電話があった。
飛野さん直々に私にお誘いがあるなんてタダゴトじゃないと、ワケもわからぬまま、慌てて出かける準備をした。
そんな私を発見したお母さんは、
「えーなになに!?アンタ、こんな朝早くから張り切っちゃって……まさかハイジとデート!?」
と、大はしゃぎだった。
挙げ句の果てには、
「アンタね、何なのその色気もへったくれもない格好は!!ハチ退治にでも行く気!?もっと肌見せな!!」
私が適当に選んだ服にイチャモンつけてきた。
これが親が子に言うセリフかと、驚愕した。
さらには勝手にクローゼットを漁りまくり、なぜかお母さんセレクトコーデに着替えさせられ、全身鏡の前へ。
「やっぱ若い頃は足出さなきゃね~」なんて、ご満悦だ。
私は鏡に映る自分を目にして、なんか……アレっぽいなって思った。
そう。アレだ。
真冬でも半ズボンで頑張る、小学生男子みたいだ!
そっからはもういてもたってもいられず、ババッと元より少しだけ女の子らしい服に着替え直し、家を飛び出した。
お母さんの小言を背に受けながらも、「何でもかんでも足出しゃいいってもんじゃないんだよ!」と捨て台詞を吐いて逃げた。
外に出ると飛野さんへ電話して、例の車に拾ってもらい──
そして、今にいたる。
助手席にはタイガも座っていた。


