荷物を回収して落書きブースに移動すると、茉莉花が付属の黒いタッチペンを手に取った。

「よーし、落書きするぞー!」

いつになく真剣な茉莉花の横顔に見とれていると、いつの間にか落書きタイムが始まっていた。

ピースをしている1枚に今日の日付を書いて『高校初プリ』と書くと「おー、絆、落書きの才能あるじゃん!」と茉莉花が笑った。

「才能?」

思わず上擦ってしまった声でそう問いかけると、茉莉花は大真面目な顔で「才能。」と返してからふっと笑った。

「この通り私は才能がなくてね」

筆記体で書かれた『Kizuna』と『Marika』は、才能がないなんて誰にも言わせないくらい、いい出来だった。

それに茉莉花が書いた『Kizuna』は、私にとっては最高のプレゼントだ。

「筆記体綺麗ー。私は筆記体苦手だから尊敬ー」

そうほめると、「そうかなー?まあありがたく受け取っとくね」とペンを持ったままにっこりと微笑んだ。

その笑みに、いやでも鼓動が高鳴ってしまう。私は平静を装い、プリクラの中の2人にブロック体で『Best Friend!』と書き足した。

背伸びして筆記体で書こうと思ったけど、今の私はブロック体が精いっぱいだ。