「プリクラ、高校入学してから初めて撮るわ」

財布を開きながら茉莉花が自嘲的につぶやいてから、カラフルな制服と笑顔で満ちたプリクラ機の前で目を伏せる。

「そうなんだ。私はそもそも2、3回くらいしかプリクラ撮ったことない」

「ほぼ未経験じゃん。プリクラ初心者仲間~」

茉莉花がふざけたように私の肩に腕を回す。茉莉花と触れているところが、少し熱くなる。

前のグループの撮影が終わり、順番が回ってきたので、私たちは投入口に500円を入れた。

プリ機のテンションが高い説明を聞き流し、私たちは撮影ブースに足を踏み入れた。

「わお」

茉莉花が謎の声を発しながら荷物置きに荷物を置く。

「これって、コート着たままとるもの?」

茉莉花が黒いピーコートに手をかけたままこちらに振り向いてきょとんとした表情を浮かべる。

「どっちでもいいんじゃないかな?せっかくだし私は上着を着たままとりまーす」

私が白いアウターを羽織ったまま画面をタッチすると、また説明が始まった。

早く撮らせてくれよ、と退屈に思ったけど茉莉花がいるとなんだかその退屈が軽くなる気がする。

『最初は安定ピース!3、2、1』

プリ機に従ってピースサインを作ると同時に、かしゃっとシャッターが切られてフラッシュが瞬いた。

『次は小顔ポーズ!3、2、1』

ピースサインを浮かべてぼーっとしていると、すぐ次の撮影が始まる。

隣の茉莉花が長い前髪をかき払って小顔ポーズをしたので私も小顔ポーズをする。

間もなくシャッターが切られ、フラッシュが瞬いた。

「やば、半目になってる」

「そうかな?」

茉莉花は半目だと言っていたけど、加工がついていてあまり気にならない。

「てか、ペース早すぎない?」

しゃべっている暇もなく、すかさず次のポーズの指定が入る。

それに従って懸命にポーズし続けていると、『右側の落書きブースに移動してね!』の音声が流れた。