家に帰って、スマホを充電器に差し込む。
部屋の明かりをつけてのろのろと部屋を歩き回っていると、お母さんが「絆―!ごはんよー!」と部屋に入ってきた。
「食べてきたからいらなーい」
そう言ってスカートのポケットに手を差し込むと「あっ、そう。ならお母さんだけ食べるね」とあっさりお母さんが部屋から出ていく。
母親の足音が去ってたっぷり10秒、私はようやく制服を脱ぎ始めた。
クリップハンガーにスカートを止め、白いジャケットをハンガーにかける。
シャツにかかっていたリボンを外し、白いカッターシャツを洗濯かごに放り込んで下着のままベッドにダイブする。
ウサギの抱き枕の耳をつかみ、引き寄せて目を閉じると『Best Friend!』が脳内にリフレインした。
それと同時に茉莉花との会話もリフレインする。
――「勝手に書いちゃったけど、よかったかな?」
――「全然いいよ。人と『Best Friend』って言われる関係になれたの、久しぶりなの」
『Best Friend』って言われる関係になれたのが久しぶり、というのはいったいどういうことなんだろう。
『Best Friend』って言われる関係になれたのが久しぶりってことは、茉莉花はおそらく長い間、人とかかわっていなかったってことだよね。
シンプルに関係を構築できなかっただけなのか、もしかしたらいじめられていたのかもしれない。
――「雪ノ瀬とやるとか無理なんだけど」
今日の体育の授業の時に聞いてしまった、クラスの男子生徒の一言が脳内にリフレインして、耳をふさぎたくなった。
そこでふと、ばちんとスタンガンで撃たれたように我に返ってベッドから飛び起きた。
これって、恋――それも、私の初恋なんじゃないか?
不愛想な茉莉花の返事を『ファッション』として受け止められたり、『絆』と呼ばれてドキッとしたり、『茉莉花』と呼んだ時に胸がくすぐったくなったり。
でも、茉莉花はどう思ってる?
考えれば考えるほどよくわからない。布団を引き上げて、抱き枕に体重をかけると、いつの間にか寝落ちしてしまっていた。



