出てきたプリクラを2つに分け、ショッピングモールを出た私たちは、自動販売機で缶のコーンスープとココアを買った。

お互いにコーンスープとココアを手渡し、私はプルタブを引いて缶を開けた。

「冬って、限定のドリンクとかがよく出るからテンション上がるよね」

コーンスープの缶を手で包みこむように持って白い息を(くゆ)らせる茉莉花に、「わかる。」と同意する。

「さて、いただきまーす」

コーンスープの缶を軽く振っていた茉莉花が、指で缶をへこませる。

「なにしてるの?」

そう質問すると、「こうするとコーンが残らないらしい。YouTubeで流れてきた」と茉莉花がいたずらっぽい笑みを浮かべた。

「絆も、コーンスープ買ったときにまたやってみたら?」

茉莉花がコーンスープを一口、口に含んでほうと息を吐き出した。

「多分忘れてるかも」

そういう小さな豆知識を、すぐに忘れてしまうのは私だけじゃないだろう。

「じゃあ、LINEで送っとくね。連絡先交換しよう」

茉莉花がLINEのQRコードを表示させる。私は缶を片手に急いでQRコードを読み込んだ。

現れたのは『茉莉花』のアカウント。アイコンは白い猫の画像で、背景は何の変哲もない空の写真だ。

「久しぶりに人にLINEアカウント教えた。絆もアカウント教えて」

茉莉花がそう微笑んで私に手を伸ばす。

LINEのQRコードを表示させるのに手間取っていると、「ちょっと貸して」と茉莉花が私のスマホを丁寧に取り上げた。

「交換成功」

コーンスープのコーンを歯につけながらニッと笑う茉莉花に「そういえば、プリクラにBest Friendって書いたんだけど知ってた?」と話題を新しく提供した。

『Best Friend』と口に出した時、口の中がざらつくと同時に胸をちくりと刺されたような気がした。だけどその違和感は無視してさらに口に言葉を乗せる。

「勝手に書いちゃったけど、よかったかな?」

「全然いいよ。人と『Best Friend』って言われる関係になれたの、久しぶりなの」

どういう意味、と一瞬踏み込みかけた私の肩を、茉莉花の寂しげな表情が掴んだような気がした。

「あ、雪だ。早く帰んないといけないんじゃない、絆」

茉莉花の言葉で引っ張られるように空を見上げると、寝ぼけたような色の空からはちらちらと白い花が降ってきていた。

「あ、ばいばい!」

腕時計で時間を確かめてから、私は駅のロータリーの階段を駆け上がって茉莉花に手を振った。