「二人一組になってボール投げをしてください!」
ウォーミングアップを一通り終えて、壁に寄りかかって休んでいると、体育館のど真ん中でハシビロコウのように突っ立っていた体育の女教師――大江からすかさず次の指示が飛んできた。
次々と二人一組ができていくのを横目に、私はボールの入ったかごから1つボールを取った。
そして、二人一組を作れずきょろきょろしていた雪ノ瀬茉莉花に近づいて肩をたたいた。
「ボール投げしよう」
私が肩をたたくと、長くつくられた前髪に隠された、澄んだ双眸がふわりと緩んだ。
その様に、私はいつも見とれてしまう。
「うん、ありがと」
ボールちょうだい、と言われたので、私は雪ノ瀬さんの消えてしまいそうなほど真っ白な手にボールをそっと乗せた。
左右非対称のレイヤーが入った腰まである黒髪に、長く作られた前髪。日の光という概念を知らなさそうな真っ白い肌に、薄っぺらい和紙のような体。
失礼ながら、あまり運動ができなそうな見た目をしているのに、今飛んできたボールはずしっと重かった。フォームもきれいで、経験者のオーラのようなものを感じる。
雪ノ瀬さんと20回ずつボールを投げ合い、ボールをかごに片付けると「集合!」と大江の声が飛んできた。
同級生たちの列に溶け込むと、「今日はバスケです」と大江がPCを操作しながらぼそぼそと説明を始めた。



