「麻音、起きなさい‼」
どたどたと部屋を上がってきた母親に布団を引っぺがされ、わたし――鍬田麻音はようやく目を覚ました。
「あんた受験生でしょ?夜更かししてるから寝坊するのよ」
朝っぱらから母親にくどくどと説教され、布団にずぶずぶと体が沈んでいくような感覚になる。
「ご飯できてるから、早く食べるのよ」
またどたどたと部屋を去っていく母親から背を向けるように寝返りを打つと、「早く来なさい‼」と母親の怒号が聞こえてきた。
「うっさいなー。わかったよ」
観念してわたしはようやく布団から出て、姿見の前に立つ。寝起きで、血色を失った唇は不健康そのものだ。
軽くため息をついて指で口角を上げ、くしで髪をとかしてから階段を下りた。



