「夢愛さん!僕、夢愛さんのすっごくひたむきなでそのべっ甲のメガネの知的な雰囲気に惹かれました!!僕と付き合ってください‼️絶対に幸せにします」
年齢=彼氏いない歴で真面目一徹のガリ勉の私が今日、人生で初めて告られました。
告白してくれたのは新宿学園市川中に通う、かっこいいよりも可愛らしいが似合う同い年の入江くん。私はどうすればいいのかよくわか
らなくて
「えっと、その、とっても嬉しいんやけど…お友だちからでええかな?」
「えと、はい!よろしくお願いします!!」
こうして入江くんと私の物語が始まったのです。
翌日の塾から意識してしまい、プリント交換で指が触れ合うだけでも恥ずかしくなってしまう始末。
そして一緒に駅まで行く。こんなルーティーンで過ごしていたら、当然のように恋心を自覚してしまう。
入江くんと一緒にいると緊張したり恥ずかしくなったりする。
早くこの気持ちをなくしたい、早く告白して楽になってしまいたい、だって私は、私は…もう両思いだから。だけど…私には告れない理
由がある。
私は小学生の頃に初恋をした。たしか小学4年生の頃だった。
あの時の私はもっとキラキラしていて、毎日編み込みやみつあみをして楽しんでいた。
授業中は自分の思っていることをはっきり言った。
今思えば、それが良くなかったのかもしれない。ある日、クラスのリーダーの女子、姫佳が私のことを
「あいつ何いい子ぶってんの?マジでキモいんだけど」
といっているのを聞いた。それだけなら良かったかもしれない。だって私は姫佳と接点がほぼないから。だけど問題はほかにある。話
している相手だ。
「マジそれな、マジで毎日髪セットしてきてぶりっ子?マジで気色悪い」
それを言ったのは…言ったのは、私の初恋の相手、八島翔太だ。信じたくなかった。翔太を信じたかった。私が好きな素直で裏表のな
い翔太を。信じてしまったら今までの翔太を裏切るような気がして。私の頭がフリーズしていても会話は止まらない。
「ねえ、今度マリとか友達呼んで夢愛をいじめない?」
と姫佳が言う。続けて翔太が
「今度おれんちで話さない?」
と言う。そこで私は話を聞くのを止めた、というよりも聞けなくなった。
この経験があってから私は裏切らない勉強の世界に身を置いた。しかし人と関わることをとても避けていたため、以前のトラウマが
消せきれずに、素直で純粋な男の子が怖くなってしまうのだ。だから私は入江くんが告白してくれるのを待つしかない。
入江さんはそんな私の様子を察してくれたのかすぐに告白してくれた。「好きです」と。
その後も順調にカップル生活を続くはず、だった。その生活が変わったのは昨日だ。
事の発端はテストの結果だ。私も入江くんも最難関校に籍をおいている。だから負けるのは嫌い。なのに、なのに。私はこの前のテ
ストで校舎1位を獲った。初めてのことで、入江くんに喜んでほしくてついつい
「やったあ!一位だあ!初めてでとっても嬉しい!入江くんはどうやった?」
と聞いてしまった。最初のうちは
「良かったねえ」
とだけニコニコしながら返してくれていた。だけど私の態度に腹がたったのだろう。
「少し静かにしてくれる?」
と入江くんは少し真面目な顔で言った。でも私は入江くんの態度が頭にきてしまって
「別にいいじゃん!個人の勝手でしょ」
と言ってしまった。
それからだ。入江くんが去っていく前にこういった。
「ちゃんと人の気持ち考えられるような人になってよ」
といっていた。
でも⋯私は入江くんに喜んでほしかっただけやのに⋯やっぱり人の気持ちわかんないよ⋯入江くんが別れたいなら別れたほうがいいの
かな⋯と思って私は桃桜の友達で華やかな舞香に相談した。
すると舞香は
「あんたはどうしたいの?」
それがわかれば私だって相談しないよ⋯
「それを聞きに来たんだよ」
「あんたの今の素直な気持ちは?って聞けばわかる?」
「えっと⋯初めて思いが通じ合った人だから一緒にいたいけど、私の性格を直さない限りもうだめかも⋯」
「じゃあ一旦離れて、私と一緒に性格を磨けばいいのよ?わかった?」
と舞香は意外なことを言い放った。
それから私は舞香と入江くんと一緒に帰る水道橋駅に行ってコスメを見た。
とりあえずアイシャドウとチーク、リップ、アホ毛直しを購入。
いままで計画的にお小遣いをためていたのでなんとかなった。
ちょっとずつだけど可愛くなっていくのを実感できた。
それに比例して、メイクをしなくなったときに幻滅されちゃうんじゃないかと恐れた。
だから性格も磨いた。
いつも入江くんを想って。
一ヶ月ほど経つと、肌が白くなった。
でも⋯メガネは外せないでいる。
入江くんが初めて告白してくれたときに褒めてくれたべっ甲のメガネだから。
でも舞香が一回外してみて入江くんの反応を見てみれば?と言った。
翌日、コンタクトで塾に向かうと入江くんは驚いて
「もしかして、ぼ、僕の他に彼氏出来ちゃったの?」
と言った。
私は首を振った。
「入江くんに言われたことがココロで引っかかってたから、ちゃんと入江くんが振り返ってくれるような女の子になろうと⋯」
「もしかして、僕のため?」
「うんっ!」
「そんな事しなくても僕は夢愛さんのすべてが好きだから。欠点があってもそれもひっくるめて夢愛さんのいいところだよ」
と入江くんが言ってくれた。嬉しくて、だけどそんな入江くんの気持ちに気づけなくって申し訳なくて泣いた。
その壁の影で一部始終、舞香は見ていた。
「これからもこのバカップルをどうぞよろしくお願いします。」
これからも入江と夢愛の物語は続いていく。



