「では次に、衣装のご相談に移りましょう」

彩夏が資料を閉じると、優花は少し緊張した面持ちで頷いた。

ドレスサロンに案内されると、純白や淡いピンク、レースやサテンなど、数々のドレスが並んでいた。

優花は鏡の前で立ち止まり、少し緊張した面持ちで彩夏に視線を向ける。

「ずっと憧れていたんですけど…私に似合うのかな」

彩夏は柔らかく微笑み、提案する。

「まずはAラインのドレスから試してみましょう。
シンプルですが、ラインが美しく出ます。
次にプリンセスラインも着てみると、雰囲気の違いが分かりますよ」

優花は並んだドレスに目を走らせ、ひとつを手に取った。

「どれもかわいくて、選べないです…」

彩夏は微笑みながら頷く。

「よく新婦さまにありますよ。憧れのドレスを前にすると、どれも素敵に見えますからね」

「そうなんです。クラシックなAラインもいいし、カラードレスも華やかで…」

優花は少し困ったように楓介を見上げる。

「挙式は王道のウェディングドレスで、披露宴はカラードレスにする方が多いですよ。
場面ごとに雰囲気を変えると、ゲストも楽しんでくださいます」

彩夏が提案すると、優花は小さく頷いた。


「あ、そして…トレーン付きがいいなって思ってて」

「トレーン付きですね」

彩夏が確認すると、優花は少し照れながら続けた。

「長いトレーンのドレスがいいなって…。写真でも憧れの雰囲気が出せそうで」

「素敵ですね。長いトレーンは挙式の入場シーンでとても映えますし、後ろ姿も美しく残せます。
バージンロードに広がる姿はゲストの印象にも残りますよ」

彩夏の説明に、優花の目が輝いた。

「披露宴では少し動きやすいように短めのタイプにチェンジする方も多いですね」

優斗が横から補足する。

「写真でも、トレーンが長いと奥行きが出て、よりドラマチックに映ります」

「ありがとうございます。これ、一回試着してみたいです」

優花は一つのドレスを選び、試着室へと入った。

やがて姿を現した彼女は、長いトレーンが床に広がり、まるで野に咲く花のように清らかな印象を与えていた。

鏡の前に立った優花は、少し恥ずかしそうに楓介を見上げる。

楓介は言葉を探すように視線を泳がせ、やがて小さく笑った。

「…似合ってる!」

優花の頬が赤らみ、二人の視線が自然に重なる。

彩夏はその光景を見つめながら、胸の奥で静かに思った。

――愛って、こんな風に形になるんだ。

やっぱり結婚式って特別だ。


衣装室に入ると、白やアイボリー、ネイビーのタキシードが整然と並んでいた。

優花がドレスの余韻を残したまま鏡の前に立つと、楓介が少し照れたように口を開く。

「彼女がウェディングドレスのときは…白のタキシードが着たいんですけど、、」

彩夏が顔を上げ、穏やかに頷く。

「白のタキシードですね。純白のドレスとの相性がとても良く、挙式の入場で統一感が出ます」

優斗が撮影の視点から補足する。

「白は光を柔らかく拾うので、並んだ時に肌も明るく見えます。写真でも、純白同士の清潔感が際立ちますよ」

楓介はラックから白のジャケットを丁寧に取り、鏡に合わせる。

「普段は絶対選ばない色だけど…今日だけは、君と並んだ時に同じ“白”でいたい」

優花は小さく笑い、彼の襟元をそっと整える。

「うん、いいと思う。すごく、いい」

試着室から現れた楓介は、白のタキシードに身を包み、柔らかなライトを受けて凛とした表情を見せる。

優花の視線が自然に吸い寄せられ、二人の間に言葉のいらない温度が満ちた。

彩夏はその様子を見つめ、胸の奥で静かに思う。

――同じ色で並ぶって、こんなにも心が近くなるんだ。

「挙式は白、披露宴ではネイビーやグレーに差し替えるのも素敵です。場面で雰囲気が変わりますよ」

彩夏の提案に、楓介は頷いた。

「入場は白でいこう。披露宴は…少し落ち着いた色かな。」