《TwilightNotes ― 夜明けに鳴る音》

 天井を見上げたまま、大和は長く息を吐いた。

 机の上には、あの日――麻里奈と書き始めた歌詞ノートが置きっぱなしになっている。
 文化祭のあと、ひとりで書き足した言葉も、今となってはどこか遠い記憶のように霞んで見えた。

「……どうして、話せなかったんだろうな」

 自分に投げたその呟きは、空気に吸い込まれて消えるだけだった。

 言い訳なら、いくらでもできた。
 榊と話していた麻里奈を見て、勝手に誤解して。
 自分の気持ちをごまかして。
 結局、何も言えなかった。

(……俺、最低だ)

 スカウトを受けたとき、「夢だったんだろ?すげぇじゃん!」と仲間は笑ってくれた。
 だが、大和の胸の奥はなぜかずっと沈んだままだった。

 ――あいつにだけは、ちゃんと話したかった。

 スカウトのことも。
 麻里奈の前で強がって、意地を張ってしまったことも。
 あの日、涙をこらえて自分を見つめていた彼女の表情も。
 全部、胸の奥に刺さったままだった。

(……本当はさ)

 ノートのすみに、自分の字で書かれた小さな一文がある。

 君となら、きっと届くと思った。

 その言葉に触れた瞬間、大和はそっとページを閉じた。
 震える指先が、気持ちの行き場のなさを物語っていた。

「……麻里奈」

 名前を呼んだ途端、ぽたりと涙が落ちた。

 枕に顔を埋め、声を殺して泣く。
 強がりも、臆病さも、優しさも――
 全部ひっくるめて、情けなくてたまらなかった。

(ごめん。ちゃんと話せばよかった。
 俺……ただ、怖かっただけなんだ)

 遠ざかっていく声。
 遠ざかっていく想い。

 もう一度、あの日の笑顔に触れられる日は――
 果たして来るのだろうか。