運命の恋は、雨のバス停から

「どうにかして、椎名さんと話がしたかった。半ば強引に傘を返すと言って名刺を押し付けたけど」

雨宮さんは苦笑いする。
強引とは思わなかったけど、自分の連絡先を書いた名刺を渡された時は確かに驚いた。

「何度か会って話をするたびに、椎名さんのことがいいなと思うようになっていた。話す時の空気感だったり、自然体で笑う姿がすごく可愛くて……」

柔らかな眼差して見つめられ、鼓動が速くなる。

「正直、自分から気持ちを伝えるなんて初めてだから、うまく言えるか分からないんだけど……。俺は、椎名さんのことが好きだ」

え、今"俺"って言った？
え、私を好き？
一気にいろんな情報が飛び込んできて、頭が真っ白になる。

「本当……ですか？」
「本当だよ。もし、迷惑じゃなければ俺と付き合ってほしい」

彼の言葉を聞いた瞬間に胸がキュンと締め付けられた。

「はい、私でよければ」
「よかった」

震える声で返事をすると、雨宮さんは安堵したように微笑んだ。
気が付くと、彼は"俺"と自然に呼び方を変えていた。
私に対して気心を許してくれたのかなと思うだけで、胸がいっぱいになる。
さっきは、まだ"僕"だと思っていたから、雨宮さんと距離を感じて切ないとか思っていたのに、現金なものだ。