やがて、メインのグリルチキンが運ばれてくる。
香ばしい香りがふわりと鼻をかすめる。
ナイフで一口大に切って口に運ぶと、肉汁がじゅわりと広がった。

メインやパスタを食べ終え、あとはデザートを待つばかり。
その間も、私たちは会話に花を咲かせていた。

「雨宮さんてロックとか聴くんですね」
「えっ?」

私の何気ない言葉に彼は首を傾げた。

「車の中で流れていたのが、洋楽のロックだったので」

私がそう言うと、雨宮さんは照れくさそうに笑う。

「あー、基本はなんでも聴くよ。でも、どうしてそんなことを聞くの?」
「ちょっと意外だったので」

正直に言えば、雨宮さんは怪訝そうに眉を寄せ、目を細めて私を見る。

「もしかして、すごい堅物なやつだと思ってない?」
「えっ、そういう訳ではないんですけど、一人称も"僕"だし、話し方も丁寧だったので、真面目な人なんだろうなと思ってました」

車の中で聴いたのは、少しハードな感じのロックだった。
私は雑食なのでいろんなジャンルの音楽を聴く。
でも、雨宮さんのイメージから少し離れていたので驚いたんだ。
意外な一面を知るたびに、彼のことをもっと知りたくなる。

「訂正させてもらうと、″僕”というのは外用で普段は"俺"なんだ」

その言葉にショックを受けている私がいた。