到着したのは、路地裏に佇む小さなイタリアンレストラン『ラヴィータ』。
クリーム色の壁に木の扉、入り口にはアンティーク調のランプが光を放つ。
二十席ほどのこぢんまりとした店内は、オレンジ色の照明に包まれ、静かにジャズが流れていた。
案内されたのは、店の奥にある個室。
扉が閉まると、外の声は届かずに二人だけの静かな空間になる。
テーブルに着くと、間もなくウェイターが入ってきてグラスを置いた。
「こちらはノンアルコールのスパークリングワインです」
グラスを持ちあげてお互いに目を合わせると、それに口をつける。
前菜が運ばれてきて、トマトと生ハムのブルスケッタを食べながら先日の出来事を切り出した。
「そういえば、また偶然ショッピングモールで会いましたよね」
「本当だよね。まさか会えるとは思わなかったので、びっくりしたよ」
まるで、示し合わせたかのようなタイミングだった。
「差し支えなければ、どんな映画を観たのか聞いてもいいですか?」
「全然いいよ。最近、話題のタイムリープものを観たんだ。主人公が過去を変えようと悩むシーンが印象的だったよ」
「あっ、今ランキング上位の作品ですよね。私も観たいなと思っていたんです」
雨宮さんとの共通点をまた見つけて、頬が緩んだ。
会話は途切れることなく続き、笑い声が自然と弾んでいた。



