一日の仕事を終え、更衣室で制服から私服に着替える。
会社のビルを出た瞬間、肩の力が抜けて解放感に包まれた。

ふと、空を見上げると灰色の雲に覆われて、今にも雨が降りそうな気配を漂わせている。

バッグを肩にかけ、足早にバス停へ向かう。
ポツポツと雨粒が頬に触れた――と思った数秒後には、空を裂くような雷鳴と共に土砂降りが襲い掛かってきた。

「嘘でしょ……」

バッグの中にある折りたたみ傘をさす間もなく、冷たい雨が容赦なく身体を濡らす。
最悪だ。
あと少しでバス停だったのに……。
そんな恨み節を心の中で言いながら走り出す。
立ち止まって傘をさす時間があったら、少しでも早く屋根のあるバス停に行った方がいいと考えた結果だ。

あっという間にアスファルトも黒く濡れて、水たまりが広がっていく。
走るたびに水が跳ね、ワイドパンツの裾が重く濡れる。
雨粒が斜めに吹き付け、顔に当たると頬を伝って首筋へ流れ落ちていく。

「なんなのよ、この雨は!」

苛立ち交じりに声に出しても、雨音にかき消される。
息を切らしながら、ようやく目的のバス停へ駆け込んだ。
髪の毛からぽたぽたと雫が落ち、身体に張り付いた服の不快さに思わず顔をしかめる。
じわじわと広がる冷たさに身震いしながらバッグをあさり、タオルを取り出して顔を拭くと、深いため息が漏れた。

天気予報では夜半から雨が降り出すと言っていたはずなのに、こんなに早まるなんて聞いていない!