受付カウンターの横にICセンサーが設置されている。
雨宮さんが入館証をかざすと「ピッ」と電子音が鳴り、ランプが赤から緑に変わった。
「ありがとうございます。では、営業部の中山に連絡を取りますので、少々お待ちくださいませ」
カウンター内の電話に手を伸ばし、受話器を耳に当てて内線番号を押す。
「お疲れ様です、受付の椎名です。高塚商事の雨宮様がお見えになりました」
『ありがとうございます。すぐに降りるので来客用のスペースに案内してもらっていいですか?』
「承知しました」
受話器を置き、私は雨宮さんに向き直る。
「中山がすぐに参りますので、こちらでおかけになってお待ちください」
来客用スペースに案内すると、雨宮さんは軽く会釈して淡いグレーのソファに腰を下ろした。
私は受付奥の給湯室に向かい、グラスに水を注いでトレイに載せる。
少し低めのガラス製のテーブルにグラスを置きながら、笑顔を浮かべた。
「よろしければどうぞ」
「ありがとうございます」
雨宮さんはグラスを手に取り、静かに口をつける。
私はそれを見て、小さく頭を下げて受付カウンターに戻った。
二度と会うことはないだろうと思っていた人に、こうして偶然再会するなんて……。
胸の奥がざわつくのを抑えながら、深呼吸していつもの業務に戻った。



