君が気色悪い 恋愛短編小説


次の瞬間、春奈は屈んで目の前にバケツが見えたかと思えばーー私は全身に水を被る。




「綺麗になったねー。後は洗剤で落とせばなんとかなるんじゃなーい?」




ケタケタと笑うクラスの輩と、張本人の春奈。




す………凄い。



ここまでテンプレートないじめってあるんだ………。



しかもここまでバカな輩って………。




あまりの非現実に、呆れながらビシャビシャになった服を着替えるために保健室へ向かおうとすると。




「だからお前とは、もう付き合いたくないんだよ」




出入り口を見ると、翔がいた。





翔はスマホをかざしている。




「バレないとでも思ったか?」




「ちょ………アンタ何やってるのよ!!!彼氏なくせに!!!」




「付き合う前、約束したよな?好きな女の代わりになるけどいいなって?」






ーー好きな女の代わりーーー。




胸を差し押さえられるような、苦しい記憶。




本命の女ってーーーやっぱりあの中学校の?




変なことを思い出してしまった。




この騒動を利用して反対側から出てやろう。




「待てよ」




手を引かれた。



掴んでいたのは翔。



ーーーえ?ーーー



私は宙に浮いたかと思えば、お姫様抱っこ。




「保健室まで送ってやるから」



女子の皆の視線が刺さる中、私はされるがままに身を委ねるしかなくって。




翔の心臓の音が聞こえるのが、余計に意識してしまう。