「美弥?」
「二人って意外と仲良しだよね」
「どこが仲良しだよっ」
「そうだよぉ、英玲奈、颯とは仲良くしたくないもん」
「黙れ、俺もだし」
また美弥がクスクスと笑い出す。
美弥は俺と英玲奈のやり取りをなんだかんだ微笑ましく思ってるようなのだが、俺は全くもって理解できない。
心底嫌ってる訳ではないが、人としての性質が絶対的に合わないと俺は断言できるからだ。
「颯、麗夜さんが持ってきてくれたワインまだ余ってるよ」
美弥がそう言って場の雰囲気を変えるように、ワインの瓶に手を伸ばした。
「お、飲む」
「入れるね」
美弥は俺の前にグラスを置くと赤ワインを注ぎ入れる。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
大きな目をこちらに向けて俺だけを瞳を映す美弥は今日も可愛い。
俺の幼稚なイライラはあっという間にどこかへ飛んでいく。
(やば。やっぱ笑うとめっちゃ可愛い)
(俺の美弥、最強だろ)
(はぁ。二人きりだったら今すぐ押し倒すのに)
邪な気持ちと共にじっと見つめれば、美弥がまた恥ずかしそうにして、俺から視線を逸らす。
「ちょっと〜美弥ちゃんのこと見すぎだよ。気持ち悪い〜」
「おい! 空気読め。いい感じだっただろうが」
「ん? サバンナで獲物を狙うヒョウみたいな目つきで英玲奈、怖かった〜」
ブルブルと大袈裟に震えて見せる英玲奈に美弥が、ぷっと吹き出す。
「てか、お前と麗夜だってさっき肉食いながら美味しいね、とか言って気持ち悪く見つめあってただろうが」
「今度はやきもち〜、やだぁ」
英玲奈が口を尖らせるのを見ながら、俺は段々とバカらしくなってくる。美弥は俺のことだけを見ると約束したのだから、英玲奈ごときに何言われようとどうでもいい。
(俺も大人になったよな)
それにここらで男としての懐の広さを美弥に見せて、さらに惚れさせるのも悪くない。
(見てろよ、美弥)
俺は唇を持ち上げると、ワインを飲み干した。
「英玲奈、言いすぎたわ。不毛な話はおしまいにしようぜ」



