「麗夜は俺と違っていつだって冷静だし、経営において視野も知見も広い。トップとしてリーダーシップも取れるし、カリスマ性もある。何よりお前は感情に流されない」
「感情?」
「ああ。どんなにムカつく相手や無理難題を突き付けてくる取引先にも感情にブレがない。だから何事も冷静に見極めて、いつも最善の方法を選択することができる。トップに一番必要なのは、会社を守るため、そして従業員の為に誠実に懸命に、正しい判断力をもつ人間だと俺は思う。優れた経営者に、血なんかどうでもいいんだよ」
「…………」
麗夜は暫く俺を見つめてから、ふうっと大きく夜空に息を吐き出した。
「……そっか」
「なに? 満足かよ?」
「そうだね。颯が意外と僕のこと好きってことがわかって嬉しかった」
「あのな、照れたからって適当なこと言って誤魔化してんじゃねぇよ」
「バレた?」
悪戯っ子のように小さく舌を出して見せる兄に向かって、俺は残り少なくなったワイングラスを持ち上げる。
あまりにも照れ臭くて口には出せないが、俺は麗夜という人間が好きだ。
(兄弟っていいな……)
どんなときでも味方してくれて、助け合える、この世でたった一人しかいない、大事な俺の兄貴。
「これからも宜しく、兄貴」
「こちらこそ、僕の親愛なる弟」
改めてカチンとグラスを鳴らすと、俺たちは同時にワインを飲み干した。



