おもひで猫列車へようこそ〜後悔を抱えたあなたにサヨナラを〜

「ほんまにあんたはラッキーガールや。世の中、“後悔”抱えとる人がぎょうさんおって、そん中から選ばれたんやからな。まぁ、ワシが見つけた~ゆうても過言ちゃうけど」

えっへんと胸を張るヒデさんを見ながら、私は怪訝な顔になる。

(あれ……待って)

(これ現実かとおもって焦ってたけど、よく考えたら夢じゃない?)

化け猫に遭遇することは百歩譲ってまだ現実であり得る話かもしれないが、二本足で立って、関西弁を話すおじいちゃん猫に遭遇なんて天地がひっくり返ってもあり得ない。

(そうだ。これきっと夢だわ)

私は途端にホッとして顔が緩む。

「はぁ。夢で良かったぁ」

「ちゃうわ! これは現実や」

すぐに突っ込みを入れるとヒデさんが、ちっちっと私の顔の前で右の前足を振る。

「え? だってこんなことありえないよ。猫が二足歩行で、関西弁しゃべって“後悔”をなくしてくれるとかなんとか」

「なんとかちゃう。後悔を手放して思い出にするためにワシが来たんや」

猫目をきゅっと細めて不満げにする、ヒデさんをみながら私は首を捻る。

「いやぁ、どう考えても……」

(夢だわ)

でも、夢の中なら思い切り安心して楽しめばいい。だって起きたらまた辛い記憶と後悔を抱えた日々が始まるのだから。


「まぁ、桜からしたら現実であって、夢でもあるさかいな」

「ん?」

「まぁ、ええわ。あとでくわしぃ説明したるわな。まず名前教えてーな?」

「えと、一ノ瀬……桜、です」

「ほぉ~桜か~。奥ゆかしい、えぇ名前やんか~」

ヒデさんは、腕組みをすると腹巻の中からパイプ煙草を取り出し口に咥えた。どうやって火をつけたのかわからないが、咥えたとたん煙が立ち始める。

「魔法、みたい……」

「にゃはははっ! こんなん序の口や」

気をよくしたのかヒデさんは腹巻きの中に手を突っ込むと、今度は桜吹雪を披露する。

「うわぁ、綺麗」

「お近づきのしるしや〜」

(猫が手品までできるなんて……)

完全にいま目の前に起こっていることすべてが夢だと悟る。冷静さを取り戻した私は、鼻歌混じりに煙草を蒸しているヒデさんに人差し指を突きつけた。

「ここ禁煙です!」

「ちゃうちゃう、またたび煙草や」

(?)