おもひで猫列車へようこそ〜後悔を抱えたあなたにサヨナラを〜

私は悲鳴を上げ飛び上がると、椅子から転げ落ちた。

とっさについた右肘と両ひざがジンと痛んだが、そんなこと構っていられない。

私は声の主に視線を向けたまま、口をパクパクとさせ大きく目を見開いたままフリーズする。


「ゴミはゴミ箱やろ」

「……ひぃい……っ」 

「聞いとるんか?」 

「猫が……なな、んで……、それに、立って……」

「はぁ。ただの猫ちゃう。見たらわかるやろ」


どこから入ってきたのだろうか。

いや、そんなことより、これはなんなのだろうか。

だって目の前の猫は猫であって猫じゃない。艶やかな黒の毛並みをしたその猫は男性用の腹巻を巻いていて、二本足で立っているのだから。

更には流ちょうな日本語どころか、関西弁を操っている。

黒猫は当たり前のように二足歩行でそのあたりに散らかっていた丸めた紙の山を全てゴミ箱に入れると、腰を前足でポンポンと叩いた。

見た目は普通の猫のように愛らしい姿をしているが、その仕草は人間でいうおじいちゃんみたいに見える。

「はぁー、年やさかいもう疲れたわぁ」

愚痴ともいえる言葉をこぼすと黒猫はうんと伸びをしながら部屋を見渡し、私が部屋の隅に立てかけてあるキャンバスの数々を眺めながら画家の見習いさんかぁ、と独りごちた。

そしてゆっくりと視線が私に移される。

「ん? なんなん、どうしたん? そんな驚いた顔して」

私はごくんと唾を飲み込んで、喉を無理やり湿らせてから掠れた声を絞り出す。

「だ、だって……、なんなの……一体……っ、化け、猫?」

「あほぅ。化け猫やったらゴミなんかほかすかいな」