おもひで猫列車へようこそ〜後悔を抱えたあなたにサヨナラを〜

『人並みの感想だけど、色づかいが好きなんだ〜、なんか吸い込まれそうで』

『わかる。ずっと見てられるよな』

(ほんとに静馬くんだ……)

私はずっと会いたかった彼の元気な姿と声に胸がいっぱいになる。

『私もそんな誰かを惹きつけて離さないような絵が描きたいなぁ……くしゅんっ』

静馬くんがポケットからカイロを取り出すと私に差し出した。

『あ、大丈夫だよ』

『じゃあこうしよ』

彼がカイロを持ったまま私の右手と一緒にポケットに手を入れる。その小さな温かさに胸が幸せでいっぱいになったのがまるで昨日のことのようだ。

(これあの日の……前の日)

まるで一度観たことがある映画のように、二人の会話もシチュエーションも仕草も間違いなく私の過去の一部分だ。


『そういや桜、明日空いてる?』

『え、うん。空いてるけど静馬くんバイトじゃなかった……?』

『夜からは代わって貰った。記念日だし。桜も一緒に過ごせたらいいねって言ってたじゃん』

『あ、うん。でもいいの? 奨学金の支払いあるでしょ?』

『多少は貯蓄あるし大丈夫』

『……でも……』

恥ずかしそうに言葉尻を濁せば、彼が人差し指で私の頬をツンと押した。

『何? 桜は俺と過ごしたくなかった?』

『う……、そう言うわけじゃなくて、その無理しないでほしいなって……』

『してないよ。好きだから一緒にいたいってだけ』

『う、うん……』

『うん、とは?』

『お、おんなじ気持ちだよ』 

私の精一杯の返事に静馬くんが、目尻を下げて笑う。