おもひで猫列車へようこそ〜後悔を抱えたあなたにサヨナラを〜

私が頷けばヒデさんが両手を天井に向けて伸びをする。

そして「んっ?」と徐に声を発すると、腹巻の中からガラケーを取り出した。

「電話や~、ちょっと席はずすな」

「あ、はい」

(電話もできるんだ……)

ひでさんはぴょんと椅子から降りて、目の前の運転席に入るとパタンと扉を閉めた。

よほど密閉空間なのか、声が大きいヒデさんの声は全く聞こえない。一人きりになった車内は静かでただ、ガタンゴトンと規則正しい車輪の音だけが心地よく響く。

「なんか……緊張してきた」

(もうすぐ……静真くんに会えるんだよね……)

鼓動が不安と期待で早くなっていく。

その時だった、私の鼓動とは正反対に列車がゆっくりと速度を落とし始めた。

(あれ、まだトンネル通ってないのに……)

ヒデさんはまだ電話中だ。

私はきょろきょろとあたりを見渡すと、前方に見えてきた駅を見て思わず、あっと声を上げた。

正確には駅を見て驚いたのではなくて、その駅にいる《《二人の人物》》にだ。

「嘘……、あの駅……にいるのって」

私は席を立つと吊り革に捕まりながら、扉のすぐそばに立つ。

同時に列車は緩やかに減速してピタリと停車した。

扉がゆっくりと開けば、過去の私と静馬くんが並んで駅のベンチで話をしている。風景も服装も見覚えがある。

(これ私の……過去……)


私たちは大学の帰り道、電車を待ちながらベンチでたわいのない話をしてよく過ごしていた。

『静馬くん、この前のロネの美術展、よかったよね』

『またその話かよ、桜は抽象専門のくせにロネ好きだよな』

(あ。この会話覚えてる……)