おもひで猫列車へようこそ〜後悔を抱えたあなたにサヨナラを〜

「はぁ、桜はまだまだ関西人にはなられへんな」

ヒデさんが大袈裟に肩をすくめるのと同時に列車は森の中へと入っていく。
大きな木の下でりんごやみかんといった果物を猫たちがテーブルに座って仲良く頬張っている。

「わ。可愛い、果物も食べるんですね」

「猫が魚だけなんていうんは昔の話やからな。ちなみに、この森は休憩所や」

「休憩所?」

「おもひで猫列車に乗れる時間も限られとんや。八時間勤務やったら一時間は休まなあかんからな」

「人間の世界と同じなんですね」 

「まあな。ついでにさっき休憩しとったんはまだ若手の猫で後輩や。ゆうても百歳は超えとるけど」

「えっ、そんなに?」

「人間みたいに見た目は歳とらへんさかいにな」

私は大きく頷いた。さっき見た猫たちの年齢が百を超えてるなんてとても思えない。

「あとな。この世界で働いとる猫はみんな使い魔を引退した猫ばっかりなんやで」

「使い魔って、いくつで引退なんですか?」

「大体六十五歳が定年や。このあたりも人間に合わせようゆうて、大昔に偉い人らが取り決めたらしいわ」

そうなんですね、と返事をしながら私は浮かんだ疑問を口にする。

「ヒデさんはおいくつなんですか?」

「わしか? 今年めでたく二百二十二歳や~猫だけに縁起いいわなぁ。にゃんにゃんにゃんっ、なんてな。がはははは」

ヒデさんが手を三回こまねく仕草をしながら小首を傾げてみせる。

「…………」

急なおじさんギャグ的なものに対応できない私に、ヒデさんが痛くない程度に額を小突いた。

「あかんあかん! そこは、なんでやねんっ、言うて突っ込まんと~、桜は大阪で生きてかれへんで~」

「……ですね、でも私東京、なので」

「あーちゃう、ちゃう。そこも真面目に答えるとこちゃうねん。桜はもっと肩の力抜き~なんでもかんでも深く考える必要あらへんねん」