おもひで猫列車へようこそ〜後悔を抱えたあなたにサヨナラを〜

目に飛び込んできたのは七色の眩い光だった。少し目がくらんでから、徐々に視界がクリアになると空には太陽と月が同時に輝いていて、見たこともない鮮やかな色とりどりの鳥が飛んでいくのが見えた。

「ここ……」

「ええやろ。これがわしらの住んでる世界や。ほんであれな」

そしてヒデさんが指差した、目の前の一両列車に釘付けになる。

「……す、ごい。ひでさんの愛車……」

「せやろ」

ヒデさんが嬉しそうに鼻を鳴らす。

列車は淡いオレンジ色を基調としていて、車体の側面には“ヒデさん”をモチーフにしたと思われる、腹巻を巻いた黒猫がユーモアたっぷりに描かれている。

また列車の行先表示器には『過去行特急』と表示されていて、列車はまるで私たちをいざなうように警笛を短く鳴らすと、ドアがゆっくりと開いた。

「自動運転搭載や。ほないこか」 

「はい」

先にヒデさんが押入れの先の別世界へと一歩を踏み出す。

続いて私もおずおずと一歩を踏み出せば、ふわりとあたたかい風が吹き、一瞬で私の足元がお気に入りのスニーカーに変わる。着ているものもスウェットからワンピースだ。

「うわぁ……っ、すご」

「はは、押入れの扉を境にもうここは時空空間やからな。なんでもありや」

ヒデさんが列車に乗り込み、肉球柄のシートにぴょんと腰かけるのを見て私も隣に腰かけた。座り心地はふわふわで、手で触れるとなんだか猫の毛並みのように柔らかくて艶がある。


「えぇ座り心地やろ」

「なんか猫みたい」

「まぁ、猫列車〜ゆう名前がついてるくらいからな。ほな出発進行や~」


ヒデさんが腹巻からまたたびパイプを取り出し、まるで杖のようにひょいと振ると、列車の扉が静かに閉まりすぐに走り出した。