推しと奏でる、私たちの唄 〜ドS天才歌手の隣は甘くて難しい〜


 ーーー…

 リハーサルが始まった。

 照明が落ち、
 夏・蓮・柊の三人がセンターへ立った瞬間——
 空気の温度が変わる。

 音が鳴る。

 たった一声、たった一音で、
 灯里の心臓が跳ねた。

 生で感じる Shoreline の歌と演奏は、
 映像で見てきたそれとは比べものにならないほど圧倒的だった。

 目頭が熱くなる。涙が頰を伝った。


 でも——

 ……終わり。

 仕事場で“推し”として見るのは、ここまで。


 灯里は小さく息を整えた。

 ここからは──マネージャー。

 気持ちを切り替えなきゃ。

 涙を拭き取り、背筋をすっと伸ばした。


 ーー……