推しと奏でる、私たちの唄 〜ドS天才歌手の隣は甘くて難しい〜


 その後、灯里は杉本と現場に戻った。

 現場はこれから始まる音楽番組のリハーサル準備で、スタッフが慌ただしく動いていた。

 その中に、懐かしい顔があった。


 「直哉! 久しぶり!」

 直哉は灯里を見つけると、すぐに照れたように笑う。

 「いや〜…一緒に仕事できるとか思ってなかったからさ。
 なんか…普通に嬉しいわ。」

 その言い方があまりに素直で、灯里はくすっと笑った。

 彼は、三浦 直哉《ミウラ ナオヤ》(29)
 年齢は私の一つ上だが、同期入社で親睦がある。

 その隣には、可愛い女の子が立っていた。



 「改めて紹介するわね。
  私は Shoreline のチーフマネージャー、杉本。

 サブマネージャーは——」

 指を軽く向ける。

 「直哉。そして、瑠花。」

 「よろしくお願いします!ShorelineのSNS担当です!25歳です!」

 明るく笑う瑠花《ルカ》に、灯里も頭を下げる。

 マネージャーの地味な服装のイメージとは裏腹に、瑠花は今流行りのギャルファッション。
 
 いつもお決まりのスーツファッションの、オシャレとは無縁な灯里には眩しく映った。


 「そして今日から、結城灯里さんが Shoreline のサブマネに加わります。
  この4人で、彼らの活動を支えていきましょうね。」

 「はい! よろしくお願いします。」

 灯里は元気に挨拶をした。