推しと奏でる、私たちの唄 〜ドS天才歌手の隣は甘くて難しい〜


 夏
 「……俺に見惚れちゃった?」

 灯里
 「ち、違いますっ!!」

 蓮(小声)
 「いや絶対そうだろ……」

 柊
 「夏〜、初日からいじわるしないの」

 夏は立ち上がり、ゆっくり灯里の前へ歩み寄る。
 至近距離で見つめられ、灯里の呼吸が一瞬止まる。

 夏
 「俺らのこと、どれくらい知ってんの?」

 灯里
 「しょ、shorelineはデビュー曲から全部聴いてます!」

 蓮
 「マジかよ、ありがと〜!」

 柊
 「ちゃんと予習してきてくれて嬉しいよ」

 夏は灯里の震えている手元に一瞬視線を落とし、

 夏
 「……ふーん。
 ま、これから“どんな奴か”ゆっくり見せてもらうし」

 
 ど、どんな奴か……?

 そこへチーフマネの杉本が入ってくる。

 杉本
 「紹介は済んだわね?
  Shorelineは癖が強いから大変よ、よろしくね」

 蓮
 「癖強は主に夏だろ!」

 夏
 「癖じゃなくて個性」

 柊
 「じゃあ、打ち合わせ行こっか」


 ──こうして、
 灯里は推しのバンド“Shoreline”との初対面が終わった。

 灯里はまだ知らない。
 この瞬間から夏が自分のマネージャーを“見極め”始まていることを──。