推しと奏でる、私たちの唄 〜ドS天才歌手の隣は甘くて難しい〜


 ーー……

 そう、俺が今日ここに来たのは、
 あの時のことをちゃんと謝りたかったのだ。

 なのに、茉白まであの時のことを謝っている。

 「あなた、あの時……孤独だったでしょ。
 なのに、私、自分の気持ちばっかりで。
 あなたに最後まで寄り添えなかった。ごめんね」

 夏も、短く息を吐いた。

 「……俺も」

 「うん……」

 それだけで、十分だった。

 過去は過去として、
 ちゃんとそこに置けた気がした。


 茉白は、空気を切り替えるように笑う。

 「今日は本当に会えてよかった。ちゃんと夏と向き合うことが出来たし!」

 一拍置いて、茉白が言う。

 「今は、いい人いるの?」

 夏は、少し考えてから答えた。

 「……いるよ」

 その時、“灯里”の顔が浮かんだ。

 茉白の表情が、ぱっと明るくなる。

 「よかった!」
 「まだ私のこと忘れられないとか言われたら、
 どうしようかと思ってた」

 「その自信、どっから来るんだよ」

 「元カノ特権?」

 軽く笑い合う。

 その時、携帯が震えた。この後も、次の仕事があるので、マネージャーの灯里が迎えに到着したようだ。