推しと奏でる、私たちの唄 〜ドS天才歌手の隣は甘くて難しい〜



 ーーーー……

 ステージの照明が落ち、
 最後の拍手がゆっくりと会場を満たしていく。

 夏は客席の後方で、静かに立ち上がった。

 (……相変わらずだな)

 ヴァイオリンの音色は、昔よりずっと表現力が上がり、格段と耳を惹くものとなっていた。
 それでいて、どこか変わらない部分もある。

 楽屋へ向かう通路で、スタッフに声をかける。

 「こちらでお待ちください」

 名前を告げると、すぐに通された。

 楽屋の扉を開けると、
 茉白が振り返った。

 「……あ」

 一瞬、目を見開いてから、すぐに笑う。

 「来たんだ」

 「……お疲れ」

 花束を差し出す。

 「公演、よかった」

 「ありがとう。
 まさか来てくれるとは思わなかったから、正直びっくりした」

 茉白は花束を受け取り、
 ふっと照れたように笑った。

 「久しぶりだね」

 「……ああ」

 沈黙。

 気まずさというより、
 言葉を選んでいる間の静けさ。

 「このあと、時間ある?」

 茉白が軽く首を傾げる。

 「食事でもどう?」

 「……ある」

 そのまま、静かな個室の店へ移動した。