推しと奏でる、私たちの唄 〜ドS天才歌手の隣は甘くて難しい〜

 レコーディングの合間。
 次の音を録る準備が整うまでの、束の間の休憩だった。

 あの時——
 夏が突然、山へ連れ出したドライブの翌日に曲は出来上がった。

 今はそれを、
 音として“録って”、仕上げていく段階に入っている。

 蓮がペットボトルを開けながら、何気なく口を開いた。

 「そういえばさ。
 茉白《マシロ》先輩、今日本で公演してるらしいぞ」

 ……何の話だろう。灯里は蓮と夏の会話に耳を傾ける。

 夏
 「……チケット送られてきた」

 蓮
 「マジで? 招待枠じゃん」

 灯里
 「ご友人の公演ですか?日程調整します?」

 そこで、蓮が軽い調子で続けた。

 蓮
 「元カノだよな」

 灯里
 「……え?」

 思わず声が漏れる。

 柊
 「まぁ、昔の話だけどね」

 蓮
 「高校の時の先輩だよな」

 夏は顔を上げないまま、淡々と言う。

 夏
 「……それで?」

 視線だけが、灯里に向いた。

 夏
 「マネージャーの結城さんは、どう思う?」