推しと奏でる、私たちの唄 〜ドS天才歌手の隣は甘くて難しい〜


 「結城灯里さん。
  俺の“やりたいこと”、全部叶えられる?

  自信があるなら、ついてきて。」


 そんなの決まってる。とっくに覚悟は出来ている。


 「何だってしますよ。あなたのためなら。」

 「頼もしいじゃん。」

 夏がフッと鼻で笑った。

 そして、私の頭を優しく撫でた。
 今度は何?内心ドキドキだ。

 「あと俺、バタバタしてるの見るの嫌いだから品よくしてね。時間厳守も。

  それから、寝癖とかちゃんと。
  変な見た目で俺の隣に並ばないで。」

 夏が灯里のわずかに違う方向を見ている髪の毛をすくった。そんなところまで見られてるなんて。

 「承知しました。」

 「それから──
  俺のことは、好きにならないでね。」

 夏の最後の言葉に、灯里は反射的に叫んだ。

 「なりません!!」


 あまりに全力で返す灯里に、夏は一瞬きょとんとして──
 次の瞬間、ふっと笑った。

 「……なら、いい。」


 ――私の推しはどうやら、思っていた以上に厄介な人だった。

 それでも。
 きっと振り回されながらも、
 私はこれから彼を全力で支えていくんだ。