推しと奏でる、私たちの唄 〜ドS天才歌手の隣は甘くて難しい〜


 ーー…


 Shoreline の現場は相変わらず慌ただしい毎日。
 でも今日は珍しく業務が早く終わった。

 ……久しぶりに、明るいうちに迎えに行ける。

 向かったのは、実家が経営するライブハウス
 「Sounds Duck」。

 扉を開けた瞬間、妹・星野 澪《ホシノ ミオ》(25)の明るい声が聞こえた。

 「おかえり!お姉ちゃん、今日は早いね!」

 澪と父・信吾《シンゴ》と母・美智子《ミチコ》は、夜のライブの準備の最中。

 その横で、大学生アルバイトで澪の恋人・森川 陵《モリカワ リョウ》が颯真の宿題を見ていた。

 「陵くん、お疲れ様!」

 「灯里さん、お疲れさまです。
 ほら颯真、ここ“計算”間違えてる〜」

 「えぇ〜〜今なおすぅ!」

 母・美智子
 「ライブ前はどうしてもバタバタしちゃって……
 陵くんがいてくれると、本当に助かるわ」

 父・信吾
 「颯真〜、今日はギター触ったか?」

 颯真
 「触ったよ!ジーーーンって鳴らした!」

 澪
 「それは弾いたとは言わない!」

 ライブ前のにぎやかな空気に灯里は少し笑った。



 「颯真、帰ろっか」

 「うんっ!」