Cherry Boy


結局あの後、花宮さんとは『同じ班の同級生』のまま距離を縮められなかった。

席替えで遠く離れた花宮さんの後頭部を一方的に眺め続け、最後の席替えでは後頭部を眺めることすら叶わないまま1年生が終わって、僕たちは2年生に進級した。

2年生ではもっと距離を縮められるかも、という僕のくだらない期待とは裏腹に、僕と花宮さんはクラスが離れてしまった。

僕のクラスにいる彼女の友達に、物を借りに来る花宮さんは1年生の時よりも髪が短くなってメガネが変わり、あのときよりずっと垢抜けて見えた。

彼女が教科書や書道セットなどを友達から受け取って戻っていく後ろ姿を、僕は何も言えずに見送ることしかできない。

短く切られた髪が揺れるたび、声をかけるタイミングを逃した自分の情けなさが針のように胸を突き刺した。

2年生も終わりに差し掛かり、僕がひとりで部活(ちなみに僕はテニス部所属)に向かっていると、僕の進行方向から花宮さんとその友達の小山(こやま)さんが自転車をこぎながら談笑しているのが見えた。

「いよいよ最高学年かぁ」

「そもそも私、先輩になれるかね…」

「『いらっすいあせー』って勧誘しまくればなんとかなるっしょ」

「寿司屋のテンションやめて」

花宮さんたちが僕とすれ違いで笑い声を流していく。

なんとなく立ち止まっていると、「おい、お前何黄昏(たそがれ)てんだよ」と、テニス部の同級生――北瀬颯太(きたせそうた)が僕の肩をたたいた。

状況が状況なので、びくっと肩が跳ねてしまった。

「あーいや別に…」

「好きな女か何なのか知らんけど、早くいかないと遅刻するぞ」

口を濁すと、北瀬はすべてお見通しだと言わんばかりに、僕を追い抜かして走り去っていっていまった。

「あいつ、勘鋭すぎだろ…」

僕は次第に小さくなっていく北瀬の後ろ姿を見送り、動揺をごまかすようにハンドルをぎゅっと握った。