Cherry Boy


「ごちそうさま。勉強してくる」

僕はキッチンのカウンターに食器を置いて、逃げるように自室に駆け上がった。

制服のままベッドにダイブすると、マットレスのスプリングがぎいっと(きし)んだ。

スラックスからスマホを取り出し、Instagramを立ち上げる。

同級生たちのストーリーを適当に流し見ていると、他とは纏っている雰囲気の違うストーリーが僕の目に飛び込んできた。

『@398._.Hanamiya』というIDとともに、『成瀬は都を駆け抜ける 読了』の文字とその本の表紙の写真がある。花宮さんのストーリーだ。

ハートボタンを押そうとした僕の指先が、凍り付いたようにピタッと止まる。

「はぁ…」

仰向けになって、わずかに膨らんだ天井の壁紙の境目を見ていると、炭酸の泡がしゅわしゅわと立ち上るように彼女(・・)との出会いのシーンが僕の脳内にリフレインした。