Cherry Boy


『…もしもし』

3コールで電話に応じてくれた花宮さんの声に、警戒が(にじ)んでいる。

手汗でスマホが滑り落ちそうになるのを何とかこらえ、「花宮さん」と何とか呼びかけた。

『はい』

ぶっきらぼうな声に、僕の緊張が最高点に達する。

『…いたずらだったら切りますよ。』

クラスでの愛想のいい声でも、小山さんたちの前での明るい声とも違う低い声に焦りが募る。

カウンターにいる浩さんに目線でSOSを送ると、『がんばれ』と書かれたメモ帳を突きつけられた。

『ほんとに切りますよ』

「話があるから!今から位置情報送るから、そこ来て!」

背中を突き飛ばされたような焦燥感に駆られ、やけくそ気味に言い放つ。

『わかりました』

永遠の沈黙に、花宮さんの小さな声が落ちる。

「おつかれ。あ、俺は用事できたから頑張れよ」

通話が切れ、カウンターに突っ伏してガス抜きをするように息を吐くと、浩さんがからりと笑った。

浩さんが手早くもう1つの『サクラサク』を作り、僕の横に置く。