「よっしゃ90点!インスタあげよー」
日月が点数画面を撮影しているところから、なんとなく高橋の方に目線を移す。
無表情でスマホを操作しており、時々口元が笑いの形になっている。
「次誰歌う?」
矢島がマイクを持って話題を振ってくれたが、別の部屋からこもった歌声がほんのり聞こえるだけだ。
「高橋歌う?」
「さっき歌ったしいいわ。海晴歌えよ」
それとなく高橋の方にもう一度視線をやると、彼のスマホの画面に『398._.Hanamiya』の文字がちらりと見えた。これは花宮さんのInstagramのIDである。
「それ、誰のインスタ?」
氷だけが残ったグラス片手に、山倉がサラッと問いかける。
「あー、花宮?さん。せっかく同じクラスやったんやしDM送っとこっかなって」
「モテ男かよ。俺はドリンク取ってきまーす」
山倉が去って数秒後、がちゃんと扉が閉まる音がやけに大きく聞こえた。
高橋のスマホの画面を凝視していると、ズボンのポケットに入れていたスマホが震えた。
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ズボンにスマホをしまって、高橋のスマホの画面をさりげなく視界に入れる。
高橋が送った『2年間ありがとう!』というメッセージに、花宮さんから『こちらこそ』と返事がついていた。
「涼?歌わんの?」
矢島にマイクを向けられて我に返る。
「どした?」
ちょうどドリンクバーから戻ってきた山倉が、ドリンク片手に僕の顔を覗き込んでくる。
「…外出てくる」
財布から500円を取り出して机に置き、部屋の隅にまとめて置いていた上着とカバンを掴む。



