『先生、1年間ありがとうございました!』
僕が手元のクラッカーの紐を引くと、辺りに小さな飾りが飛び散った。
くるくるに巻いた髪をハーフアップにした女子生徒が、佐藤の肩に『本日の主役』のたすきをかける。
肩までの髪に緩くウェーブをかけた女子生徒が、水色の小さな袋と大きな花束を手渡す。
「…主役は皆さんですよ」
チープな水色のコサージュを外しながら、佐藤が少し笑う。
「あ、ちゃんとクラッカーは掃除しといてくださいね」
しんみりした教室の空気に似合わない佐藤の発言に、クラスに笑いが生まれる。
「卒業証書を配るので、名簿順に取りに来てください。」
机に置いていた証書ファイルを回収し、パタパタ開閉させていると、「城瀬涼」と佐藤の声が僕の耳朶を打った。
証書を受け取り、ファイルに収納しているとふと涙がこぼれそうになる。
制服の袖で涙を拭い、改めて卒業証書をじっと見つめる。
『城瀬涼 あなたは中学校の全ての課程を修了したことを証します』
中学校の全ての課程を修了してしまった。
鼻をすすって涙をごまかすと、「涼、泣くなよ」と、日月が僕の肩を揺さぶってきた。
「泣いてねーよ。花粉症だよ」
「俺も花粉症やしわかるわ。なんで花粉症シーズンに卒業式やんだよ」
僕の嘘を信じてくれた日月が、花粉がどーだかーだと文句を垂れ始める。
「席を戻してください。最後の学活をします」
『本日の主役』のたすきを肩から下げたまま、佐藤が指示を飛ばす。



