Cherry Boy


昇降口で靴を履き替え、3年3組の教室に入る。

花宮さんたちはまだ来ておらず、人はまばらだ。

トートバッグを机の横に引っ掛けて、ぐるりと教室を見渡す。

「おい涼ー」

廊下に目線をやったところで、北瀬が教室のドアを開けて勝手に教室に入ってきた。

「おはー」

教卓の横に置かれたパイプ椅子に座って足を組んだ北瀬が、ニヤリと意地悪な笑みを浮かべる。

「あと0日だろ。花宮さんに告白しないでいいんかよ」

教室の後ろに飾られたカウントダウンカレンダーに目線をやった北瀬が、声を潜めて爆弾を落としてくる。

「告白はしたいけど…」

口ごもって机の上に腕を投げ出すと、花宮さんと小山さんが教室に入ってきた。

「ご本人登場…ってやべっ、佐藤来てる」

そう言って北瀬はそそくさと3組から出ていった。

それと入れ替わるようにして、堅苦しいスーツ姿に安っぽい水色のコサージュをつけた佐藤が教室に入ってくる。

「卒業したくない」

「わかる。既に泣きそうやもん」

朝の会が始まるまであと5分。逃げるように廊下に出ると、花宮さんと小山さんの声が僕の耳朶を打つ。

ふと振り向くと、いつもと違うハーフアップの花宮さんが静謐(せいひつ)な笑みをうかべていた。