「…怪我しない程度に、エンジョイしてくださいっ!」
体育委員会の担当教師である長瀬誠が、ステージ上でそう指示を飛ばす。
「じゃあ、第1試合は2組対5組。ほかのクラスは観戦しててやー」
僕はステージに寄りかかって山倉の近くにずりずりと身を寄せ、男子の試合を眺めることにした。
男子のコートで飛び交うボールをぼんやり眺めながら、僕は緑色の防球ネットの先の彼女――花宮さんをがっつり観察している。
小山さんと久米さんに挟まれて、三角座りで女子の試合を眺めるポニーテールの花宮さんに見惚れていると、いつの間にか試合が終わっていたらしい。
周りで拍手が生まれたところで我に返り、「次3組!」と矢島に腕を引っ張られて、僕はぼんやりコートに立った。
じゃんけんでボールを手に入れた日月が相手の2組にボールを投げ、2人が外野に行く。
外野に回った相手がこちらにボールを投げているのを横目に、防球ネットの向こうのコートにいる花宮さんを眺める。
きゃーきゃー盛り上がっている女子コートから視線を外すと、足元にボールがかすめた。
「俺当たったわ。お前もぼーっとすんなよ」
すれ違いざまにそうつぶやいた山倉が、僕の肩を軽く小突く。
返事する暇もなく一瞬で走り去った山倉を見送り、飛んできたボールをキャッチする。
僕が全力で相手コートめがけて投げ込んだストレートは相手コートを飛び越え、自分のチームの外野にキャッチされた。



