「球技大会ガチろーぜ」
卒業まであと3日。今日は球技大会だけして給食を食べれば帰れる。
廊下で、山倉と日月としゃべっていると女子生徒が僕たちの前を通った。
何の気なしに顔を上げる。
いつもの律儀なストレートヘアではなく、高い位置で髪を1つに束ねた花宮さんの後ろ姿が視界に入り、嫌でも鼓動が高鳴ってしまう。
その姿をぼんやりと眺めていると、「涼、おい」と山倉に肩を叩かれた。
「可愛い女の子に見惚れてんじゃねーよ。長瀬に『バカヤロー』って言われても知らんからな」
「…見惚れてねーよ」
黒く汚れた上靴に視線を落とす。
「涼おはー」と、誰かに肩を掴まれて顔を上げる。
現れたのは、伸びかけの坊主を綺麗に刈り上げて形を整えた矢島だった。
「おは。てか、頭剃ったんや」
「気合い入れたかったから。てか涼はいつも通り過ぎて怖いわ」
僕の中に、イベントだから何かしようという考えは存在しない。
なので、イベントでヘアアレンジに命をかける女子や、ヘアセットに勤しむ男子の気持ちはわからない。
「俺もセットしてみた。ど?」
「鳥だな」
山倉と日月のしょうもない会話を聞き流しながら、僕は窓から見える、約3年間お世話になった白い校舎をさっと眺めた。



