Cherry Boy


なんとなくはぐらかすと、食い気味に「違うね。」と井倉がこちらに身を乗り出してきた。

「花宮さんと話しときゃよかったーって、顔に書いてある。あ、ウィスキーロック」

無言で頷いた浩さんが、「次の進学先で一緒になれる保証はないわけだし、『やらない後悔よりやる後悔』だろ」と言い放つ。

北瀬にも同じことを言われた。

やっぱり告白しようかな、と思った矢先に花宮さんの無表情が浮かび、風船のように決意があっけなく割れる。

「教師目線、花宮さんは城瀬くんのことを毛嫌いしてるわけじゃない気がする」

ウィスキーのロックをあおった井倉が、冷静な表情でぽつりとつぶやく。

「1年しか接点ないからあれだけどね。花宮さんは誰かを毛嫌いするタイプじゃないと思ってる」

木のカウンターにグラスを置いた井倉の頬がほんのり上気している。

「告白、してみます」

静かに決意表明し、手元の淡雪ブレンドをすする。

レモンとジンジャーの匂いの奥に混ざった草っぽいリンゴのような甘いにおいが、ほんのり僕の鼻腔を擽った。