Cherry Boy


「えのちゃん、来たよ。あ、城瀬くんお久しぶり」

受験が終わり、とりあえず清湖に合格して南陵の合格発表を待っている、卒業まであと7日の放課後。

久しぶりに訪れた『Cherry』で浩さんと話していると、くたびれたパーカー姿の井倉が平然と入店してきた。

「Cherryではお久しぶりですね」

「城瀬くん、南陵どうだった?」

持ち上げた淡雪ブレンドをソーサーに戻すと、ちゃっかり僕の右隣に座った井倉に問いかけられた。

「微妙です」

目をそらしてカウンターの木目を指先でそっと撫でる。

「そう。卒業まであと1週間だけど、城瀬くんはやり残したこととかはないの?」

やり残したこと。

受験に向けてもっと勉強しとけばよかったとか、花宮さんともっと話すべきだったとか、実力テストをもうちょっと頑張ればよかったとか、挙げ出したらきりがない。

「うーん…勉強とかですかね」