『それでは、始めてください』
係員の誘導で、長机がずらりと並んだ体育館に押しこまれた。
その片隅で僕は、問題用紙に印字された細々した文字列にくらっとした。
『わたしたちの周りであふれている言葉以外の膨大な情報――それを研究しているのが、心理学の…』
問題用紙の黒い活字だけが上滑りし、シャーペンを握る手にじわりと汗がにじんでいるのがわかる。
周りの筆記音が僕を押しつぶさんばかりに響く。
僕はマスクの下で静かに唇をかみながら、もう一度問題用紙の活字に目を通した。
静かに眉間にしわを寄せると、僕の横に座る他校の女子生徒が問題用紙のページをめくる音が聞こえる。
試験監督にばれないように、そっと視線をそちらにやる。
涼しい表情で問題用紙と解答用紙を交互に見やるその横顔に、僕の心の中で静かに焦りが膨らんだ。



